店名 | 柴田酒店 |
代表者 | 柴田真人 |
住所 | 〒819-0168 福岡県福岡市西区今宿駅前1丁目10−6 |
営業時間 | 10〜20時 定休日:1・3・5日曜日 |
HP | http://www.shibatasaketen.com/ |
SNS | |
TEL | 092-806-0055 |
一生懸命作られたお酒を、いいお客さんに伝えたい
ーまずはお店の成り立ちについて教えてください。
私の祖父は木桶職人で、近くの酒蔵で働いたんです。でも、木桶は徐々にホーローといった素材の容器に変わっていって、需要が減っていきました。そこで、自分たちの業体も変えていこうとして、大正12年にはじめたのが酒屋。以降、家族で経営し、現在三代目として私が経営しています。
ー当時の酒屋さんの状況はどんな感じでしたか?
今宿・玄洋エリアは一番多いときで、13〜14店舗の酒屋があったと思います。かつては酒販免許を取得することは今より難しかったので、「酒は酒屋さん」でした。それが免許の自由化に伴って、いろんなところでお酒を置くようになって状況が変わり、酒屋はどんどん閉店してしまったんです。
うちは当時、売上のほとんどがビールだったのですが、毎日の配達でヘトヘトだったんです。これをずっと続けていくのか?と考えた時に「ちょっと違うんじゃないか」と。そこで”日本名門酒会”という団体に入って、いろいろと勉強したんです。そして、おいしいものを適切な価格で販売していくという、今につながる店づくりを見いだしていきました。
全国の酒蔵にも訪れる機会が増加。いろんな蔵元で話を聞いたり、泊まり込みで酒造りを手伝ったりすると、お酒に対する意識も大きく変わって、もっと大事にしたいという気持ちになりましたね。お酒は1滴もこぼせなくなりました。一生懸命造られているお酒をいろんな人に伝えたい、きちんとしたお店でいいお客さんに伝えたい、と考えるようになったんです。
お客さんの顔を思いうかべながら選ぶお酒
ー今はどんなお酒を扱っていますか?
九州のお酒が多いです。やはり九州の酒蔵さんとは直接顔を合わせることも多く、一生懸命作っている姿を見て感じることがあって、お客さまにもよくすすめるようになりました。
私は仕入れる際に、できる限り試飲をするようにしています。飲んでみると、「このお酒は、あの人とあの人に喜んでもらえるな」っていうのが思い浮かぶんです。単においしいお酒というだけでなく、お客さんに喜んでもらえるものを仕入れます。あとは地域性があるものや味が違うタイプを選んで貰えるようにと、銘柄に偏らずいろいろな種類をそろえるんです。
お客さんの嗜好や食文化、ライフスタイルも変わり、お酒の飲み方も変わっています。そうすると品ぞろえも変えていかないといけない。今のお酒のトレンドは日本酒でいうと、甘酸っぱいもの。ワイングラスで日本酒を飲む方が増えていることから、香り高いタイプ、味が深いタイプ、発泡性のお酒などいろんな種類が造られています。
さらに生産者も世代交代することで、酒質だけでなくラベルやデザイン、売り方もどんどん新しいものに。季節によって提供するお酒を変えるといった、こだわりがある飲食店も多くなっています。
住む人が喜ぶ、「住みたくなる街」今宿
ー今宿という街の変化をどう見ていますか?
昔は住民が少なく高齢者が多い街でしたが、九州大学の移転を機に、人の動きが活発になってきました。若いご夫婦や学生さんも増えて、人の流れに合わせて面白い店も増えています。今宿は通りが一つの商店街という形ではなく、お店が点在しているんです。小さくてもキラッと光る、そんなお店がたくさんできて、つながることで「今宿って面白い店がいろいろあるよね」って感じてもらえるようになるといいですね。
今宿は、新しく入ってきた人を受け入れる体制はできている。新しい人が違う目線で今宿を見てくれるのは、嬉しいですよね。とはいえ、外からどんどん人に来てほしいということではなく、あくまで住んでいる人たちに喜んでほしいという思いがあります。今宿のコンセプトは「住みたくなる街」。海岸や公園の整備をはじめ、地元の人たちが一番気持ちよく暮らせるような街づくりがされていると思います。
「お酒を通して人とつながりたい」
ー働く上で、大事にしていることは何ですか?
「お酒を通して人とつながりたい」ということでしょうね。お酒がおいしいというのは必要条件ですけど、それを通してお客さんとつながれる、そんな場所を作っていきたいです。
お酒との新しい出会いには、自分の主張も織り交ぜていきたいです。コンセプトを決めて「なんでこれを選んでいるのかな?」って興味を持ってもらって、そこからいろんなお話もしたい。小さいお店だからこそ、お客さんに近い立場になれるので、いろいろと相談に応えていきたいです。店に来られる方は「これ!」というお酒を決めずに、一緒に選んでいく形が多い。例えば「女の子が集まる場所で、びっくりさせたい」とか「60代・70代の通の人に、昔ながらのお酒を持っていきたい」とか。いろいろと話ながら決める場合が多いですね。その後に「あの時、喜んでもらえました!」って言ってもらえる事が一番うれしい。そういう出会いの場にしてほしいです。
ーこれからのお店づくりについて最後に一言お願いします。
これからも店を続けるために、自分自身の感覚を大事にしていきたいです。世間からおいしいと言われているお酒でも、実際に自分で飲んでみてピンと来ないものはあまり置かないようにしています。自分の体験を通して、本当においしいと思うもの、お客さんにおすすめしたいものを選んでいきたいですね。