店名 | 堀ちゃん牧場今宿駅前店 |
代表者 | 堀田 和秀 |
住所 | 福岡市西区今宿駅前1丁目9-2(今宿駅前店) |
営業時間 | 11:00~17:00 【定休日】日曜・祝日 |
HP | https://horichan.jp/ |
オンラインショップ | https://horichan1129.theshop.jp/ |
SNS | Facebook, Instagram |
TEL | 092-836-5729 |
家族で育てたおいしい牛肉を、直接お客様に届けたい
―では、まずお店の成り立ちから教えてください。
「牧場」っていう名前がついているように、もともと家族経営でやってる牛を育てる牧場なんですよ。お肉屋さんを開いたのは、もう20年前くらい前ですか、BSE問題がきっかけです。食肉の安全・安心に不安を覚える人たちが増えるなかで、父が「おいしい肉を、お客さんの手元に直接届けたい」と、精肉店の開業を決めました。牧場の近くに事務所があるんですが、そこを店舗としてオープンしました。
当初、営業は金曜と土曜だけ。私は当時小学4年生でしたが、「週2日で大丈夫?」って子供ながら心配していたのを覚えています。それからもっと広い焼肉レストランを開いたりしたんですが、もともと牧場だったので山のほう、ちょっと不便な場所にあるんですね。鉢伏山観音の近く。私たちもそこから街に下りてくるときは「下山する」なんて言いますけど、お店も今宿の駅前に「下山」してきて、このお店をオープンさせて今年で4年目になります。
―ご自宅は牧場にあるんですか?
そうです。もともと祖父の代では牛や豚、馬を飼う牧場を福岡市内の七隈のあたりでやってたんですが、父が高校生のときに跡を継いで、「牛一本に絞ろう」と決めて、もっと広い牧場にしよう、ということで今宿にやってきました。今宿に牧場を移転してから4、50年になります。今の「堀ちゃん牧場」という名前になってからは20年ですね。
―今宿では「堀ちゃん牧場」という名前の知名度もすごく高くなってきましたね。
ありがたいことですね。「堀ちゃん牧場」という名前を出すと「ああ!」と言ってくださることも増えてきましたが、まだ全然ご存じない方もいらっしゃる。まだまだ頑張らないとな、と思いますね。昔から来てくださってるお客さんには、「山から下りてきてくれてありがとう、買いやすくなったよ!」と言ってくださる方もいらっしゃいます。両親の人柄にお客さんもついてくださっているのかな、と感じます。
―お店としてのこだわり、強みは何でしょうか。
愛情をこめて、家族で育てた牛さんのお肉を提供していることですね。牧場で生まれた子牛を、家族ぐるみで育てて。牛の生産から加工、卸売、小売まですべて家族でやっている、というのが一番のこだわりだと思います。お肉に関していうと、うちで育てて販売しているのは「博多和牛」です。柔らかくてジューシーで、脂身に甘みがあるのが特徴です。博多和牛は2005年に商標登録された比較的新しいブランドで、父もブランドの立ち上げに関わりました。A3等級以上で、福岡県で穫れた稲わらを食べて、登録生産農家で20カ月育った牛という条件があるので、誰でも博多和牛を名乗れるわけではないんですよ。牧場直売で、一頭丸ごと卸してるのはたぶん堀ちゃん牧場だけだと思います。
―「堀ちゃん牧場」のお店をもっと増やしていく予定はないんですか?
うーん、考えてないですね。お客さんから「もっと街なかに出したらいいじゃないの」と言っていただくこともありますが、それよりも地元に愛されるお店でありたいと思っています。テイクアウトやギフト関係、自社サイトでの通販もはじめています。通販サイトは新型コロナの感染が広がった2020年5月からスタートして、今では東京をはじめ全国からご注文をいただいています。それまではお電話とかファックスでしたけど、インターネットでいろんな情報を見ながらご注文いただけるようになったのは、すごくよかったですね。
お菓子とお肉、似てるところがあったんです
―マミさんご自身のストーリーを教えていただけますか?
さっきもお話しましたけど、私が小学校4年生のときに堀ちゃん牧場のお店がスタートしたんですね。そのとき、お店で私が作ったマドレーヌを売ってたんです。土曜日限定でね。ちょうどその頃お菓子作りにハマってたんですが、お母さんに「お客さんに売ったらいいじゃない?」って言われて、1個50円・12個限定で毎週毎週売って。それがお小遣いになるのもよかったんですが、お客さんから「おいしいよ、これ」といっていただく喜び、自分が作ったものが完売するうれしさを知って、「ああ、こんな世界もいいなあ」って思うようになりました。
それからパティシエに憧れて、高校を出て専門学校に行きました。どうせお菓子をやるんだったら福岡じゃなくて東京に行こう、と上京して、吉祥寺のお店に「働かせてください!」って直談判して飛び込んだりしましたね。まあ、早く家を出たかったという面もありますけど……。
でも、パティシエの世界ってとにかく過酷で。パン屋さんって朝早いイメージありますよね?でも、お昼には終わる。お菓子の場合は朝6時からスタートして、日付が変わるころまでずっと仕事が続くのが当たり前。下積みで2年ほど働いて、「さすがにこれはきついな」って辞めて、フリーランスでお菓子のケータリングをやったりしてました。
ちょうどその頃、この今宿のお店がオープンしたんですよ。開店から半年後くらいですかね、お父さんとお母さんが東京までわざわざ飛んできて、「ちょっとマミ、帰って来んね?」って言ってくれて。
最初は福岡に帰ってくる気まではなかったんですけど、お店に立ってお肉を売ってると、思いのほか楽しいな、と思うようになりました。けっこう牛さんも面白い、お肉もお菓子と似てるところもあるし、面白い。10頭牛さんがいたら、お肉も10通り、全部違うんですよ。今では帰ってきてよかったと思ってますね。
我ながら、楽しい人生生きてるなと思ってますね。パティシエやって東京で苦労したり、「もうダメだ」って思った経験があるから、何が来ても怖くないと感じてます。いろんな経験をした20代があれば面白い30代になる。面白い30代を過ごせば、素敵な40代がやってくる。それを重ねていって、素敵な老人になりたいですね。いろんなチャレンジを否定せず、「面白いじゃない、やれるんじゃない?」って言えるような。自分にリミットはかけたくないですね
街の人たちの日常に溶け込むお店でありたい
―帰って来てみて、今宿はどうですか?
今宿って、海と山が近いのが結構好きで。まあ、家は山の中腹にあるんですけど、それでも歩いて1時間もすればきれいな海がある。こんなに近い距離で、山と海の両方を楽しめるのはあまりないんじゃないですか。最近どんどんいろんなお店が増えてきてるので、子供のころよりも楽しいです。今宿、やるじゃん!って思ってますね。
新しいお店もありますけど、昔からの風景もちゃんと残ってる。ちょっと行けば、昔とおんなじ山があって田んぼ道があって、おじいちゃんやおばあちゃんが田んぼや畑の面倒を見てる姿がある。それでいて、天神や博多には高速で2、30分で行けるじゃないですか。いい街ですよ。
うちのお店に、二日に一回来てくれるおばあちゃんたちがいるんですよ。ここで集合、ここで解散みたいにして、寄り合い所みたいになってる。それがうれしいんですよね、そういうお店がいい。「今日はちょっとのぞきにきただけよ」って何も買わなくてもいいし、おしゃべりに来るだけでもいい。もちろん、ほんとは100円くらい何か買ってくれるとうれしいですけど。これからも、そんなあたたかいお店であり続けたいと思っています。